不眠に陥りやすい理由と体内時計の関係

人の命と健康を守る看護師の仕事は、やりがいが大きい一方で自分の健康を損ないやすい側面も持っています。その代表的な悩みの一つが不眠症です。日勤と夜勤を繰り返す不規則な勤務形態は、人間の身体に備わっている体内時計を狂わせます。体内時計は約24時間周期で体温やホルモン分泌などを調節し、自然な眠りと覚醒のリズムを作り出す重要な機能です。しかし、本来は身体を休めるべき夜間に活動し、活動すべき昼間に睡眠をとる体内時計に逆らった生活を送るため、このリズムが乱れてしまいます。その結果、疲れているのに眠れない、眠りが浅いなどの不眠の症状が現れるのです。

不眠症に陥る具体的な理由は、体内時計の乱れだけではありません。不規則な生活リズムは、心と身体をコントロールする自律神経のバランスにも影響を与えます。夜勤中は患者の急変などに備えて常に緊張状態にあるため、身体を活動的にする交感神経が優位になるのです。興奮状態が勤務後も続くと、心身をリラックスさせる副交感神経にうまく切り替えられず、寝つきが悪くなります。また、夜勤明けは外が明るく生活音も多いので、質の高い睡眠の確保自体が困難です。光を浴びると睡眠を促すホルモンのメラトニンの分泌が抑制され、たとえ眠れても浅い眠りで疲労が十分に回復しない悪循環に陥ります。

このような理由から、看護師は不眠症のリスクと隣り合わせです。だからこそ、意識的なセルフケアが重要になります。まずは睡眠環境を整えることから始めましょう。遮光カーテンを使って寝室を真っ暗にしたり、耳栓やアイマスクを活用したりするだけでも睡眠の質は向上します。スマートフォンのブルーライトが脳を覚醒させてしまうため、使用は避けるべきです。そのほか、ぬるめのお湯にゆっくり浸かる、リラックス効果のあるアロマを焚くなど自分なりの入眠儀式を見つけて、無理なく仕事を続けられる体制をつくりましょう。

夜勤で看護師が経験するあるある

夜勤に携わる看護師の多くが思わず頷いてしまうあるあるが存在します。たとえば、仮眠室で一瞬だけ意識が飛んだと思ったら実際には1時間近く経っていたり、なぜか人手の少ない深夜に限って急変や緊急入院が重なったりすることが挙げられるでしょう。また、普段は冷静な同僚の意外な一面を発見し、不思議な連帯感が生まれやすいのも夜勤ならではです。緊張感の続く勤務の中で、ふと窓の外が白み始めていることに気づいたときの安堵感は、何物にも代えがたいものがあります。

そうした夜勤中に不思議と高まるのが、食欲と物欲です。勤務中に夜勤が終わったらこってりしたラーメンを食べることを計画したり、帰りがけにコンビニで新作スイーツの購入を考えたりなど、食べ物のことばかりを考えてしまうのもよくある話でしょう。これは睡眠不足やストレスによって、食欲をコントロールするホルモンバランスが乱れやすくなっているためと考えられています。疲労感がピークに達すると、自分へのご褒美を求める気持ちも強くなるものです。ネットショップの広告がいつもより魅力的に見え、気づけば高価なコスメや洋服を購入している経験を持つ人も多いでしょう。

これらの欲求は、夜勤という非日常的な勤務を乗り越えるモチベーションにつながります。しかし、毎回のように暴飲暴食や衝動買いを繰り返すと、健康や家計に影響が出かねません。大切なのは、これらを上手にコントロールすることです。今月の夜勤を乗り切ったら欲しかったバッグを買うといったように、具体的で少し先のご褒美を設定すると目の前の物欲に惑わされにくくなります。食欲に関しても、夜勤明けに食べるご褒美メニューを一つだけ決め、それ以外は栄養バランスを考えた食事をとることを心がけると、満足感を得ながら健康を維持することが可能です。